改めて言うまでもなく、怒髪天の結成30周年アニバーサリー・イヤーの幕開けを飾った今年1月の武道館ワンマンライブ『怒髪天結成30周年記念日本武道館公演“ほんと、どうもね。”』は、折れず曲がらず、地道に己の道を突き進んできたロック・バンドだからこそ成し得た金字塔的ライブだった。
同時に、前年の夏フェス『OTODAMA'13〜音泉魂〜』で行われた、グレートマエカワ&竹安堅一(フラワーカンパニーズ)/マツキタイジロウ(SCOOBIE DO)/佐藤シンイチロウ(the pillows、Theピーズ)というスペシャル編成バンドの演奏とともに、怒髪天の名曲群を奥田民生/鈴木圭介(フラワーカンパニーズ)/ TOMOVSKY/レキシ/キヨサク(MONGOL800)/コヤマシュウ(SCOOBIE DO)といった錚々たるラインナップが参加しての応援企画「“勝手に”熱湯CM『怒髪天1・12 日本武道館 *怒髪天は出ません(泣)』からも明らかなように、同世代はもちろん後輩バンドからも広く愛され続ける唯一無二のアニキ衆だからこそ体現できた、ロックの/バンドの夢と希望の結晶そのものだった。
バンド自身も予想していなかったというソールドアウトの武道館公演を、増子直純と上原子友康は次のように振り返っている。



 「まあ、ぶっちゃけ一生に一回だろうと思ってるし、30周年だからこそできたっていうところもあるんで。2年ぐらい前に『やろうか』みたいな話があって、『ちょっと待てよ』と。その時点で28年やってきて、Zepp Tokyo売り切るぐらいだから、まあ3000人弱ぐらいだよね。そっから武道館を満杯にするまで、2年間で1万人弱まで増やすっていうことがね、あり得ないでしょ? 『絶対無理だ』っつってたんだけど。『でも、もうやるタイミングないですよ。次はさらに10年後、40周年ですか?』っていう話になって。メンバー現存してんのか?っていう話でもあるから、今しかないねって。やっぱり、同じように地道に長くやってきたバンドたち、あと後輩のバンドたちにね、『続けてれば何かあるよ』っていうことを提示するっていうかね。無茶してでもやることによって、そこにひとつロマンがあるんじゃねえかなと思って」(増子)
 「友達のバンドとか人のバンドのライブをよく観に行ってるから、大きさもよく知ってるし。まさか自分たちが出るとは思ってなかった場所なんで(笑)。ステージから観る景色も想像つかないし。でも、やっぱり特別な場でしたね。武道館ってやっぱりすごい場所なんだなあって。普通の会場とはちょっと違うというか」(上原子)
 「やろうと思ったひとつのきっかけになったのは……『ロック・バンドっていうものにロマンはあるんだよ』っていうことを実証したいな、っていうのが結構大きかったかな。いわゆるメジャーな音楽誌にインタビューが載って、大きなフェスに呼ばれて、バーターでも何でも音楽番組に出て……そうしねえと、バンドって何かを成すことができないような錯覚に囚われがちじゃない?そんなこと絶対にないから。時間はかかるけど、『やりゃあできるんだよ』っていうことを実証してみたいな、っていうのがあって。それができただけでもよかったかな。それこそ毎日テレビやラジオでかかってるようなやつらから、地方のハードコア・バンドまで、みんな喜んでくれたから。やったことにすごく意味があったなと思ったね。ただ、やってる本人はほとんど覚えてないんだよね、バッタバタで(笑)」(増子)



 3月にはライブDVD『怒髪天結成30周年記念公演 "いやぁ、こないだ、ほんと、どうもね。" LIVE AT BUDOKAN』としてリリースされているこの武道館公演のWアンコールで、「俺たちが武道館やったぞ。次はフラカンか? ピーズか? コレクターズか? トモフか? SAか? やれよ! 俺に恩返しさせろ! 1年間宣伝さしてくれ! やったほうがいいよ、最高だから。バンド最高だあ!」と呼びかけていた増子のMCはそのまま、2014年ロック史を代表するに相応しい名場面であり、音と言葉で明日をこじ開けていくロックという表現そのものの渾身の存在証明だった。その後、4月から約半年にわたって開催されてきた初の47都道府県ツアー『怒髪天、おかげさまで30周年。47都道府県勝手にお礼参りツアー “いやあ、なんも、おかえしだって。”』も、 「全3枚組・39曲・2500円(税別)」という30周年記念ベスト盤『問答無用セレクション"金賞"』の出血大サービスぶりも、「今」に真っ向から向き合おうとする怒髪天の全身全霊傾けたロックのロマンを、何よりも雄弁に物語っている。


 そして――武道館のステージでも予告されていた通り、4月発売の『紅盤』こと『男呼盛"紅"』に続き、30周年アニバーサリー・イヤーの締めを飾るアルバムとして11月26日にリリースされるのが、『白盤』こと今作『歌乃誉"白"』だ。『紅盤』同様、1stアルバム『怒髪天』でもタッグを組んだ良き先輩・上田健司をプロデューサーに迎えて制作された今作は、いきなり流麗なストリングスが鳴り渡るバラード・ナンバー“ひともしごろ”で幕を開ける。

 「『紅盤』がね、わりとダンス・ミュージックっていうか、ハードなやつから始まったから。振り幅を考えたら、これしかねえだろうっていう」(増子)
 「最初に『紅盤』を作った時から、対になるものを作りたいなっていう話をしてたから。『紅』がああいうハードな内容だったから、なんとなく歌もの寄りにしたいかなっていうのが漠然とあって。“ひともしごろ”ができた時に、プロデューサーの上田(健司)さんに聴いてもらったら、『ストリングスを入れたい』っていうアイデアがあって。頭の部分のストリングスをアレンジして、それができた時に、『ああ、もうこれは1曲目しかない!』って。これがもう、『白盤』を象徴してるなあって。『紅』の“己 DANCE”、『白』の“ひともしごろ”っていう」(上原子)



 アルバムの制作は全国ツアー真っ只中の5月頃からスタート。「東京に戻っては2〜3日スタジオ入って、また旅に出て、っていうのをずーっとやってた」(上原子)、「4ヵ月ぐらいやってたからね。こんなに長くレコーディングしたの初めてだよね。ただ、日数はそんなに多くないっていう。間が空いてるから。リズム隊は5月ぐらいには終わってたから、『もう覚えてない』って言ってる(笑)」(増子)というハードなスケジュールの中で、「今年はメンバーでいる時間がめちゃめちゃ長い! 帰ってきてもレコーディングでびっちり一緒にいるからね」(増子)という充実した時間を過ごしてきた怒髪天の4人。9月にようやく完成を見たという今作はまさに、そんな濃密な空気感がそのまま焼き込まれたような、アグレッシブで鮮烈な作品となった。

 《ガキの頃の 俺が見ても ガッカリしないように 生きているか?》と自身の30年歩み続けた重みと道のりを初めてきちんと歌った“ひともしごろ”。
坂詰克彦の《バカディ・ガッタ!》(バカで良かった)の連呼とキャッチーなメロディが響き合う開放感と《バカじゃなければ こんな世の中 耐えきれないよ》のコントラストが強烈なブルース感を描き出す“バカディ・ガッタ!”。
躍動感のカタマリのようなディスコ・ロックのリズムに乗せて、「どっこい生きてるざまあみろ!」とひときわパワフルに歌い上げる“どっこいサバイバー”。
奥野真哉(ソウル・フラワー・ユニオン)の華麗なピアノ・プレイとともに、○も×も入り乱れる人生のヤケのヤンパチ感をジャズ歌謡的なミステリアスなアンサンブルでスウィングさせる“人生○×絵かきうた”。
増子自身「あの頃歌ってたものに、やっと追いついた」と語る通り、《耐えて咲かせる 花もある》と侠気あふれる初期曲“明日の唄”を(アレンジはほぼ当時のままで)格段に強靭に歌い上げてみせる渾身の再録バージョン。
そして、「30周年の締め括り」であると同時に「31年目への闘争宣言」でもある、どこまでも快活なるド根性ロックンロール“ジャガイモ機関車”……
「Don't trust over 30」的なハードコア・バンドとしてそのキャリアをスタートしてから30年。新しい場所に踏み出すことを恐れないチャレンジ精神と、「灰色だろうが泥だらけだろうが人生は前へ先へ転がっていくしかない」という不屈の哲学に裏打ちされた破格の生命力が、今作の6曲には高純度な形で凝縮されている。


 「やったことないことをやろうよ、っていうのが常にあるから。『らしさ』なんてないからね。やりゃあ『らしく』なるんだよ。そのサジ加減がやっとできるようになってきたんだろうね」。増子はそう語っていた。30年間の活動を通して鍛え、研ぎ澄ませてきた「怒髪天のロック」への確信が、バンド自身をさらに未知の領域へと駆り立て、怒髪天の世界をさらに大きく押し広げていく、という無限のスパイラルが今なお、いや今だからこそ生まれている……そんな怒髪天の最新型にして最強モードの「晴れやかな凄味」を、この音から誰もが感じ取るはずだ。
『紅盤』『白盤』を携えて、2015年1月30日からは東名阪札のワンマンツアー『怒髪天 2015年新春TOUR "紅白利き歌合戦"』の開催も決定している。
狂騒感と祝祭感にあふれた30周年アニバーサリー・イヤーを越えた後も、怒髪天はさらにでっかくぶっとく転がり続ける――《道なき道も 切り拓くべや ジャガイモ機関車 ポッポー!》と意気揚々と宣誓する“ジャガイモ機関車”は、「その先」への予感を十二分に与えてくれる。


2014.10.17 ライター 高橋智樹





■増子直純&上原子友康による全曲解説



01.“ひともしごろ”

増子 「“ひともしごろ”は、30周年記念曲じゃないけど、今までの総括っていうか、自分の作ってきた曲のキーワードを少しずつ入れていこうっていうのもあったんだよね」

上原子 「この曲は歌詞が先だったんだよね。『白盤』のレコーディングをするっていう時に、最初にできた歌詞なんじゃないかな。やっぱり、ストリングスはいいですよね。ずっとやってみたかったんで」

増子 「昔から一回はやってみたいと思ってたけど、なかなかタイミングがね。予算の問題もあるし(笑)。まあ、30年に一回ぐらいいいかって。レコーディングしてるのを見たけど、すごいよね、やっぱり。ロック・バンドとは違うよね。全部で9人で、多重録音で重ねて、オーケストラの分だけ入ってるから」

上原子 「バンドだけでやってたら、いつもの怒髪天サウンドにはなってると思うんだけど。ストリングスが入ったサウンドで、増子ちゃんが歌ってるのを最後に聴いた時に、新鮮でしたよね。『ああ、こういう歌の聴こえ方するんだ』って。そういう発見が今だにあるのが幸せですよね」

増子 「ただ、歌うのは難しかったね。ストリングスはピッチが容赦ないし。異常な精度の高さっていうかね。ありゃすごかったな。勢いだけでいけないから、『ちゃんと歌わなきゃいけない』っていうのはかなり頑張ったね。でも、壮大なものをイメージしてたのを形にできたから、よかったよね」





02.“バカディ・ガッタ!”

増子 「今回、総括してみると、『泣きのアルバム』になってるからね。自分で家で聴いて、グッと泣きのアルバムだなあと思ったし。この曲のサウンドも面白いよね? 無機質なサウンドに、諦念的な歌詞が乗るっていう。諦めて開き直ってる、観念してるっていうところを、コミカルに聴かせるっていう」

上原子 「これは曲からできて。メロディがあって、サビはみんなで歌える、ぐらいのイメージしかなくて。この曲に関しては『こういう内容の歌詞で』っていうのもないし。でも、歌詞が乗っかってきて、曲が化けましたよね。ちょっとブルースを感じるっていうか。で、最後にみんなでタイトルを考えていったんだけど、なかなか決まらなくて。『決まらなかった時は北海道弁』っていうのがうちらの中にはあって(笑)、“セバナ・セバーナ”とかもそうだけど。『バカでいがった』って北海道では言うんですけど、そのまんまだと面白くないので、造語みたいにして」

増子 「このアルバムの裏テーマは『望郷』もあるからね」

上原子 「《バカディ・ガッタ!》っていうのは坂さんが言ってるんですけど。最初は間奏だけに入れようと思ってたんですけど、これも上田さんから『“BE MY BABY”みたいに頭に入れた方が面白いんじゃないか?』って。で、つけたらさらに曲が化けましたよね」

増子 「詞曲を別に作ってると、こういう化学変化もあるから。詞曲を全部ひとりで作っちゃってると、こうはならないし。その妙味はあるよね」

上原子 「不思議だよね。最後タイトルがついて、どんどん曲がでかくなって、間奏の展開とか、全部統一感のあるものになっていくんですよね」

増子 「人生長く生きてきて思うこと、日常を切り取っていくっていう。それをブルースでなく、コミカルに聴かせるっていうのが、いちばんコントラストがつくからね。コメディアンの哀愁じゃないけど、人生は喜劇か悲劇かっていうね」



03.“どっこいサバイバー”

増子 「これは最初、あるタイアップの依頼があって。『1曲丸々ほしい』っていうことだったんで、それのために作ってたら、最終的に『15秒でいい』っていう話になって(笑)。じゃあこれどうするよ?っていうことで、『歌詞を丸々書き直して作ろうか』って。バンドを30年間やってきて、いちばん書き直したね。この曲だけで10曲分ぐらいの歌詞を乗っけたかな。その中から選んで『これだろう』と。でも、すごくいいのができて。苦労した甲斐があった。ギターもね、いいよね。壮大だしね」

上原子 「もともとでっかいイメージで曲を作ったから、『どっこい』が合わさった時に、また違うでかさになって。これもまたバンド・マジックで(笑)」

増子 「もう、でかいものを合わせるしかねえだろうっていう感じだったよね(笑)。この『どっこい生きてる感』っちゅうのは、昔っからの大テーマなんだけど、30周年だし、いいかと。どストレートなものを出しとくかと。これも、後ろ向きな歌詞に明るい曲調っていう。あんまり他のバンドじゃやらない感じだろうね」

上原子 「ライブで楽しいと思うな、これ」

増子 「そう。楽しいんだけど、気がついたらとんでもないこと歌ってるっていうね(笑)。悩もうが何しようが、結局は生きてんだからさ。悩んだり何なりしてることはとりあえず置いといて、まずやるしかねえだろうと。いちばん言いたいことはそれだからね。そりゃ、悩むことも苦しいことも、誰だっていっぱいあるさ。あるにしても、やるしかねえんだと。『悩んで死んじゃいたい』とか『これ以上進めない』って思っても、一晩寝れば次の日はちゃんと生きてんだからさ。悲しいかな、人間は図太いよ。でも、そのしたたかさが、生き物としての根っこにある生命力だったりするわけじゃない? そのことを、重く感じさせずに伝えるっていう……それは、年を重ねれば重ねるほど気をつけてることのひとつではあるね。大事なことを、ポップに、冗談めいて言わないと、伝わらないっていうか、説教になっちゃうでしょ? 音楽で説教するほど面白くないことないからね(笑)」



04.“人生○×絵かきうた”

上原子 「これは最初に歌詞ができて、曲をつけた時に……もうちょっと明るいロックンロールみたいなのを作ってたんですけど、詞をよく読んでいくと、ちょっと違うなと思って。昔のジュリーとかショーケンとか、男の色気みたいな歌を増子ちゃんに歌ってもらったほうが、この歌詞にはいい気がしたんですよね」

増子 「たまにはシリアスなのもいいんじゃないかなと思って。単純にこう、ギミックなしっていうかね」

上原子 「奥野先生(奥野真哉/ソウル・フラワー・ユニオン)のピアノがまたいいんですよね。同世代なんで、『こういうふうに弾いて』っていう細かい指示が必要ないっていうか。最初、曲のアレンジの話になった時に、『カッコよく弾けばいいんでしょ?』って言ってて。それがまたカッコいいなあ!と思って」

増子 「その『カッコいい』っていう認識が共通であるからね、聴いてきたもの一緒だから。それは説明しなくてもいいから、ラクだよね。前から何かあるとちょいちょい弾いてもらってるけど、ハズれたことないからなあ」

上原子 「たぶん奥野くんはね、自分はメンバーだと思ってますよ(笑)」

増子 「曲の最後の締めのところ、よくカットしてるからね。お前が締めるな!って(笑)。でも、毎回ストライク投げてくれるからね。すごく自然にできたし。これはいちばん悩まないでできたかな。歌詞も、前から作ろうと思ってた歌詞だったから。単純にこれ、ライブでやったら締まるだろうなって」

上原子 「こういう曲は昔からやってるけど、ピアノを入れたりして、ここまでこの世界を広げたのは初めてじゃないかな?」

増子 「新しいことをやってく方が楽しいもんね。そんな俺らですら、“今夜も始まっているだろう”(坂詰作詞&ヴォーカルのシングル曲)はアルバムには入れられなかった(笑)。本当は『白盤』に入れるはずだったんだけど、ちょっと無理だなって。ボーナストラックも考えたんだけど……シングルで隔離するしかなくなっちゃった(笑)」

上原子 「『紅』ではシミ(清水泰次)が歌ってた(“ちょいと一杯のブルース”)から、『白』では坂さんね、って。でも、スケールでかすぎた。アルバムに収まるような男じゃなかったですね。すみませんでした!っていう(笑)」



05.“明日の唄”(再録曲)

増子 「『紅盤』もそうだけど、昔の曲を1曲再録しようっていうことで。ほぼ一発録りに近いけどね。いわゆる『R&E』(リズム&演歌)を標榜し始めた頃の最初の曲だから、もろ演歌だけど。それを自分たちなりに解釈して歌うっていう。もう、濃すぎると思う、これ。誰もやらないと思うよ。やりたいとも思わないだろうし。これが根本にあるからね、『これが男のロックじゃい!』っていうさ。そう思ってるんだけど、なかなか理解されないところはあるね」

上原子 「26〜27の時に作ってるからね。当時出したアルバムに入れてたんですけど、そのアルバム自体、『チープな音で録ろう』みたいなのが昔はあって。それをアレンジはそのままで、今の音でやりたいなと思って。そしたら、やっとこの曲に歳が追いついた感じですね。『紅盤』の“友として”も、キーも何も変えず、当時と同じことを今やろうっていうコンセプトでやったんですけど。これも一緒で」

増子 「当時は歌のキーが低いんだよ。今はキーが上がっちゃってんだよね、逆に(笑)。でも、それに合わせてキーを上げちゃうと、重さがなくなるっていうか。声を張ってる時は気持ちいいけど、それ以外の部分はちょっともったいない感じなんだよね。でもまあ、渋いよね?」

上原子 「エモいよね。究極のエモ・ロックかもしれない(笑)。

増子 「エモすぎるよね。外国の人たちが聴いたらどう思うのかな?って。『何だこれ? ロック?』っていうことになると思うんだよね。このエモさがどう受け取られるのか、って。これこそエモでしょ、ジャパニーズ・エモ。超エモいよ」

上原子 「レコーディング中に、上田さんに『世間ではオアシスとかが流行ってる時にこれ書いたんだ……』って言われましたね(笑)。あと“明日の唄”は、坂さんはたぶん、怒髪天の持ち曲でいちばん好きだと思うんですよ。昔から、何かと言うと『“明日の唄”やりたい』って言ってるし。ドラム叩いてて気持ちいいんじゃないかな」

増子 「モタっても大丈夫だからじゃない? 今回も、もう思いっきりタメまくってるからね(笑)」



06.“ジャガイモ機関車”

増子 「今まで雑誌とかいろんなところでも言ってるけど、これ、怒髪天が活動再開する時のバンド名のひとつの候補だったんだよね。『夕暮れ係長』か『ジャガイモ機関車』か『サムライブルー』か、しょうがないから怒髪天に戻すか、っていう。『マッドポプラ』っていうのもあったね。《ヴォーカル:石狩川昇》だから。何をやろうとしてるんだか(笑)」

上原子 「よかったね、ジャガイモにしなくて」

増子 「よかったよかった。この曲、バカ曲に聴こえるけど、すごい泣き曲なんだよね。田舎から出てきてさ、前のめりにずーっとやってきたからね。形は悪いし、泥だらけでみっともないかもしらんけども、それでも転がり続けて突っ走ってきて。それでも進んできたよって。このがむしゃらな気持ちがね、俺の原動力だから。聴いてるとね、自分で作ったにもかかわらず、泣けてくるよね。おっさんたちが《シュッシュポッポ》っつってるのを聴くだけで、胸熱くなってくるよね。頑張ってんなあ! 走ってんなあ!って(笑)。で、ちょっとだけ方言入ってるからね。《切り拓くべや》って。ちょっとだけ入れるところがミソだよね」

上原子 「この曲がアルバムの最後でよかったなあと思って。30周年で『紅』『白』を出して、最後をこの曲で締めてるっていうのが、これからもまだまだ走っていくぞ!っていう、うちらの決意表明みたいな感じになってて。作ってる時は僕、これは1曲目のつもりで作ってたんですよね。こういう疾走感のある、明るい感じで『白盤』を始めたいなと思って。でも、歌詞が乗っかって、後から《シュッシュポッポ》がついて、これもバンド・マジックで曲がどんどんでかくなっていったから」

増子 「『らしく』なってくるんだよね。1曲目のオープニングの壮大さとシリアスさから、最後《シュッポッポ》で終わってるっていう。このアホさ加減!(笑)。すごいと思うよ。6曲通して聴いた時の、感情の振れ幅は、ちょっとおかしくなりそうなものがあるからね。ただ、ライブでは坂詰さんは大変だろうね。すでに『できれば避けたい曲だ』って言ってるから。何だよ『避けたい』って。まだ一回もやってないよ!(笑)」



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