ツアーファイナル、11月17日(日)大阪 なんばHatch で共演する9mm Parabellum Bulletから菅原卓郎氏をお迎えしての対談です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は大阪で共演する9mmの菅原卓郎との対談!
バンドの歴史がちょうど3倍になろうとしている両バンドのヴォーカリストが、9mmのサウンドの話から日本語でロックを唄うことについて語ります。
それから両バンドの交流、さらにバンドをやること、長く続けることの魅力についてトーク。大阪も白熱必至だ!【文:青木 優/写真:飯村 潤】



増子: 9mmとはフェスとかでは一緒にやったりしてるけど、初めて会ったのはデビューの頃だね。「9mmすごいぞ」って話は聞いてたの。それでスペシャでPVか何か観て、こりゃすげえなと。ラジオでも聴いたんだよな。もう完全に俺ら世代の曲でしょ?

菅原: ああ~。なるほど!(笑)

増子: ほんと、ひさびさだったね! いい意味での歌謡メロディというか、俺らの世代からしたらジュリー(=沢田研二)的っていうかさ。ちょっと艶っぽい感じのね。それで演奏はすごいじゃない? これはカッコええな!と思ったもんな。

菅原: ありがとうございます!

増子: すごい激しい音楽だけど、音楽としてちゃんと成り立ってるというかさ。激しい音楽って、わりとハードロックから派生したバンドが多いのよ。ヴィジュアルも含めね。そうなるとさ、はっきり言って、歌詞が聞くに耐えないものが多すぎんだよね(笑)。ほぼ! でも9mmは歌詞がちゃんといいものじゃない? 大人がきちんと聴くに耐えうるというかさ。それ、日本で初めてだったんじゃねえなかと思ってさ。で、キッズたちが9㎜聴いて「いい!」って思ってるってことは、まだまだ日本も捨てたもんじゃねえなと思ったね。『ONE PIECE』読んだ時と同じだよ。「これ、子どもら読んでんだったら、まだ大丈夫だ!」と思ったもん(笑)。それで……誘ったんだよね?

菅原: 磔磔(京都)ですよね? たぶん最初に一緒にやったのは。2007年かな。僕らもちょうどツアー中で、タイミング良くやれそうだったんで「じゃあお願いします!」っていう。磔磔って、2階から降りてライブが観れるじゃないですか。それで怒髪天のライヴ観て、楽しいな!って……もう、エンジョイしてましたね。



――卓郎くんは、それまでは怒髪天のことは、どれぐらい知ってたんですか?

菅原: 僕は、実はそんなに知らなくて、実際に会ってからちゃんと聴きはじめたぐらいなんです。で、ライヴもそん時初めて観て「ああ、こんなバンドなんだ」というのを実感したっていう。

増子: だって卓郎が小っちゃい時ってさ、俺らはほんとに超低空飛行だったもん(笑)。誰も見つけられない位置にいたと思うから。普通、中学校高校ぐらいの時に、オーバーグラウンドにいるロックバンドを聴くじゃない? それで好きになったり、興味持ったりするだろうけど、そこに見つからない位置にいたからね!完全な死角にいたから(笑)。

菅原: 怒髪天が活動を再開しだしたのって何年でしたっけ?

増子: 1999年だね。そこで活動を再開しはじめたね。で、結局ライブをやり始めたのは2000年とか2001年だったな。

菅原: そうですか。中学生とか高校生の頃は日本の曲も外国の曲も変わらず聴くんですけど。高3とか大学生になってくと、日本の音楽をだんだん聴かなくなったりするじゃないですか? 「洋楽のほうがカッコいい」つって。だから自分らがバンドをやり始めたのがちょうど2002年とかからで、そこから2006、07年ぐらいまでの日本のバンドの音源って、丸々飛んでるんですよ。その頃のはあまり聴かないできちゃったんです。しかも自分のバンドのほうに一生懸命になってますからね。そうすると、先に実物に会っちゃう、みたいなことのほうが多くて。

増子: 俺も20代の前半とかは、日本で聴いてんのは、それこそブッチャーズとかイースタンとか、札幌にいる友達のバンドばっかだったもんな。それ以外はボブ・マーリーとか、どブルースばっかり聴いてたからね。そこらへんの時にオーバーグランドにいたバンドの曲、ほとんど知らないんだよ。それはバンドマン特有だと思う。

菅原: はい。だから自分らのすぐ上の年代が抜けちゃうんですよね。

増子: そう、ちょっと上の世代ね。だから俺らだとブルーハーツとかそうだったもん。それにバンドやり始めると、流行ってるものとかオーバーグラウンドのものにアンチになるじゃない? 「こんなんだったら俺らのほうが」みたいな。でも、あとから聴いたら、すごくいいっていうさ(笑)。「そりゃ売れるわ!」と思うっていうね。

菅原: (笑)そうですね。

――増子さんはそれがブルーハーツだったんですね。

増子: そう、ブルーハーツね。絶対にいいのはわかってるから、友達みんな好きだし、あえて聴かなかったんだよね。影響を受けたくないから。しかも自分たちが押し進めてたものを、さらに削ぎ落としてったバンドだったから、「これは絶対に聴かねえほうがいいな」と思ってた。今さら聴いてるけど。いい大人になって聴くと、またいいんだよね(笑)。



――卓郎くんもバンドを始めた頃に日本の音楽はあまり聴いてなかったということは、初期の頃は9㎜の中の歌謡曲的な要素は掘り下げてはいなかったんですか?

菅原: そうですね。そもそも「歌謡的だね」といろんな人が言ってくれるところも、自覚的なところと、そういうつもりじゃなくてやってるところがあって。で、曲を書いてる滝と「そこのサジ加減がわからないよね」とよく話してるんですよね。どっちかというと、歌詞のほうで僕は歌謡曲の仕組みをだんだん、勝手に寄せてるかな。で、それがメロディと合わさると、よけいにそう聴こえるのかなと思うんですけど。でも自分らが日本人で、日本人に響くように曲を書いたら、そういう歌謡曲的なものになるのは当然だよなっていうとこに落ち着いてます、今は。

増子: そう、当然だよね。俺、この間、FUJI ROCK出た時に、若手で英語で唄ってるバンド多いけど、絶っ対に外国のバンドに勝てないなと思ったよ! もう痛感したわ。世界に向けているんであれば、日本語でやるべきだよ。自分が最大限表現できる言葉でやるべきなの。それが世界で見たことないものになるわけじゃない? 結局、ものまねの域を出ないからさ。英語はものまねでしゃべってるわけじゃない?

菅原: 俺もそう思います。ほんとに話せる人だったら関係ないんですけどね。

増子: そう、それはいいんだよ。それは最初から世界ランカーだからね(笑)。

菅原: 洋楽が、外国の音楽がカッコいいと思って聴いてるけど、実は言葉の意味はわかんないじゃないですか。だけど、こっちの人間が感動するんだから、その逆も……日本語で唄っても、それはあるはずだろうって。

増子: 絶対ある! そして外国の奴が聴いたら調べるよ、日本語を。「これ、何て言ってんのかな?」って。

菅原: うん。ほんとに気になったら、そうしますよね。

増子: 絶対そうすると思う。いわゆる洋楽的な楽曲に日本語が乗ってたり、日本語のメロディがそこに溶け込んでたりするものって、ビックリすると思うんだよね。9㎜なんか、世界的に面白いと思うよ。俺らが10代の頃さ、ジャパメタ――日本のメタルのブームがあって、それが海外に行った時に、すごい評価されたんだよね。LOUDNESSとかさ。あれに近いものはあると思うんだよ。

菅原: へえー! そうなるといいんですけどね。海外に行った時に。

増子: うん、グルーバルになるってそういうことだからね。言語が全部、英語に統一されるってことではないから。

菅原: 逆に、ローカルなもののまま持ってかないと……。

増子: そう、もったいない!寿司もそうでしょ?たとえばアメリカでカリフォルニア巻き、じゃないでしょ? やっぱり赤身のほうが喜ばれる。日本だと逆にカリフォルニア巻きとか食ってるけど(笑)。

菅原: (笑)そうですね。

増子: 9mmは、その面でも心強いというか。しかも、これは人柄もあるんだろうけど、周りのバンドにすごい好かれてるじゃない?それ、すごくいいことだなと思って。やっぱり殺伐としがちっていうかさ。斜に構えてる奴とか、長年の経験上見てるけど、いなくなるからね!(笑)

菅原: (笑)いつの間にか?

増子: いつの間にか、いなくなるんだよね。そこまでのもんなんだわ。何かしら自分に自信がないから、何か演じてるんでしょ? 最後まで、長年演じきるのは難しいよ。そのままの、素の人間が出てる奴がいいよ。やっぱバンドって、人となりだからさ。うちのメンバーも9㎜好きなんだよな。名前がいいじゃない? キューだよ? 日本語じゃん。そういうところがカッコいいのよ!

菅原: そう、ナインじゃないんですよ。でもデビュー当時はCD屋さんではナ行に入れられてたんです(笑)。それ見るたびにムッとしながら、「だいたいカエラちゃんの隣だよな」と思って、そっと木村カエラさんの隣ぐらいに移したりしてました(笑)。

増子: あとメンバー全員、キャラが立ってるのがいいよね。まあドラム(=かみじょうちひろ)とは番組(注/スペースシャワーTV『爆裂☆エレキングダム!!』 2010~12年)を一緒にやってたからね。



菅原: そうですね。増子さんはうちのライヴを観たあとに、坂さんに必ず「お前もああいうふうに叩けよ!」って(笑)。

増子: そう! ムリな注文だろうけどね。坂さんも好きなんだよね、かみじょうのドラム。スパン!としてるじゃない?

菅原: そうですね。切れ味がありますね。

増子: ああいうのは、やっぱいいよね。気持ちがいい!

――えーと、坂さんのドラムは――。

増子: そういうのがないね!坂さんのドラムはまったりしてる(笑)。まあ、そこはそれぞれのバンドだから、<隣の芝生は青く見える>じゃないけど、これはもうしょうがねえんだわ(笑)。

菅原: そうですね、うん(笑)。いろんなこと思いますもんね。

増子: ほんと、滝とかも、ただごとじゃないからね! やっぱ面白いよね、やることが。

菅原: (笑)そうですね。ただごとじゃないですね、たしかに。

増子: だから、いいメンバー4人集まってるなと思うんだよ。バンドって、それぞれに自分たちができることを持ち寄って、やるものじゃない?絶対的なカリスマがいて、それプラス、バックメンバー、とかっていうんじゃなく。9mmはバンドなんだよね。それは素晴らしいし、理想形だよ。しかも曲ね、聴けば聴くほどよくできてんだよ。バンドやってる奴が聴いて、面白いと思う曲じゃない?

菅原: そうですね!バンドをやってほしいなって、やっぱり思うんで。

増子: 俺もそう思うわ。楽器でやってみるとわかる面白さってあるからさ。「あ、ここにこれ入れんの?」みたいな。俺らもけっこう仕組んでるけどね(笑)。

菅原: いやあ、怒髪天は隠し味の宝庫ですよね!? すごいですよ。

増子: そうそうそう。そうなのよ。なるべく気づかれないようにしてるけどね。でもバンドやってる奴にはわかるんだよね。

菅原: 「お、お、お!?」って。この間のアルバムの1曲目から、もうおかしいじゃないですか? どう考えても。素晴らしいなと思って。

――9mmからはだいぶ年上の怒髪天ですが、人間的にはどうでしょうか?

菅原: (笑)いや、ほんとにかわいがってもらってます。

増子: 好きだからね!

菅原: 僕らもみんな、怒髪天好きですよ。あらためてそう言うのも、おかしいですけど(笑)。

増子: さっきも言ったけど、番組でかみじょうとずっと一緒だったからね。あいつ、アホだからね! ほんっとに最高だよ! いっつもいっつも「9mm的に大丈夫なのか、それ?」っていうことばっかりだったから!

菅原: いやぁ、そういう人ですからね。うん、「そういう人」としか言いようがないんですけど(笑)……酔っぱらうと、またすごかったりしますしね。あと、清水さんも坂さんも友康さんも、会うと「9mm、カッコいいね」って……小声で言ってくれるという(笑)。

増子: そう。みんな控えめだからね、うちは(笑)。

菅原: ワーッと言ってこないで、そっと「良かったよ」と言ってくれるとこが<ああ、ほんとにいいと思ってくれたんだ>と思って。

増子: そうそう、よく見てるからね。そもそも若手で興味持ってるバンドが少ないからさ、メンバー的には(笑)。でも9㎜も、若手と言っても、もう中堅だよね?

菅原: そう言われますね。最近は、たまに。



――結成から丸9年ですよね? デビューしてからは……。

菅原: もう6年ですね。僕は今年30歳なんですけど、もうちょっと上に見られる時と、逆に下に見られる時もあります。

――あ、怒髪天は、今年で結成29年目なんですよね? ということは、来年は――。

菅原: 来年、ちょうど3倍になるんですよね(笑)。

増子: ……恐ろしいね!

菅原: すごいですね。そうか、怒髪天と僕はひとつしか違わないんですね(笑)。レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)って僕と同い年なんですよ。たしか。

増子: そうか! ということは俺らは、レッチリとキャリアだけはそんなに変わんないんだね。す~ごいなあ(笑)。でも9㎜って続きそうだよね? ずーっと。

菅原: 頑張ります!(笑)

増子: 仲良さそうじゃん、みんな? で、お互いの役割を尊重してるのも、よくわかるしさ。俺らも「秘訣は何ですか?」ってよく訊かれるけど、やっぱ仲いいことだもん。もともと友達集めて作ったバンドだし、うまいやつとやりたいわけでもないからさ。うまきゃ、うまいほうがいいけどね。だけど、そこがすべてじゃない。うまくてもヤな奴とは、やりたくないからさ。

菅原: うん。別の人に変わっちゃったら、そのバンドの音じゃなくなるのが、すごく目に見えてわかりますよね。たとえば誰か抜けちゃったら<もうやめるしかないな>っていうふうになっちゃうと思うんですよ。同じ音には絶対ならない。

増子: そう! ほんと、バラすしかないね。違う音になっちゃうからさ。それは俺、9mmにも感じるんだよな。

菅原: 俺らも<このメンバーで遊ぶ場所を作りたい>ということが大きいですね。というか、そういうもんだったんだなと思うようになりました。だんだん。

増子: そうなんだよね。なかなかそこに気づかない奴も多いから<ひとりでできるんじゃねえか>と思っちゃったりするんだよ。とくにヴォ―カルはそうなんだよね。違うんだよね! そういうことじゃ、絶対ないんだよ。

菅原: うん。やっぱ人と一緒にやらないと、その人のいいところも見えないなあって思う時があります。

増子: そう! たとえばフルーツジュースを作った時に、イチゴの味が強いからつって、でもイチゴだけじゃフルーツジュースに絶対ならないんだよね。ちゃんと混じってないことが絶対わかる。キュウリだけのジュースになっちゃったら、もう別モンだから。

――まっ、増子さん! たとえはフルーツジュースでしたよ?

増子: あ、キュウリは入れないわな? 野菜ジュースになっちゃう(笑)。でもまあバンドってのは、それぞれ人間だしさ。長年付き合ってれば、腹が立つことも「お前、何やってんねん!」「バカじゃねえのか?」ってこともあるけど。だけど、それでもやってると楽しいね。そりゃあ30年もやってればあるよ?
 
菅原: ありますよね、きっと。でも「この人はこうだから、しょうがない」みたいなところですよね。

増子: そうなんだよね。それで結局、ワンツースリーフォー!ってカウントを入れて始めると、<ああ、やっぱりこれ、最高だな>と思っちゃうんだよね。

菅原: そうですよね。やっぱり演奏しだすと、そうなっちゃいますよね!(笑)

――では対バンへの意気込みをお願いします!

増子: 俺はもちろんしっかり観たい!でも出番前だからそんなにしっかり観れないと思うけど(笑)、何しろそこでハードル上がるし、お客さんもボルテージも上がってるだろうし。そこにどう切り込んでくかっていうね……すげえ楽しみだな!

菅原: これは個人的な話になっちゃうんですけど、「独立!俺キングダム」の国家斉唱があるじゃないですか? ♪オオオオオ~!っていうところ。俺、あそこを聴くと、いつも泣きそうになるんですよ。そこの本物を早く見たいんですよね(笑)。

増子: それ、よく気づいたね! メンバー以外で気づいたの、初めてだわ。あそこでメロディーとコードが落ちてくのって、ああいうふうに、わざわざ改造したの。あのほうがグッと来るんだわ。

菅原: ああ、そうなんですか? いや、♪オオオオオ~になる時に、すごいグッと来るんですよ。で、1回で終わっちゃう。もう1回聴きたいんだけど、でも!っていう……。

増子: そう、もう1回はダメ(笑)。1回なんだよね。

菅原: うん、1回が美しいんだと思う。

増子: そうか……これ、友康が喜ぶと思うよ。すっごいこだわって言ってたから。最初、何言ってるか俺、全然わかんなかったけど(笑)。

菅原: うん、それにまんまとやられてます(笑)。でも怒髪天の前にやるからと言って、あまり気にせず、いつも通りにやらせていただきます!

増子: 楽しみだなあ。うれしい。頑張るよ!

菅原: はい。僕らは出番終わったら、飲みながら、ずっと見てるので。

増子: そうだね、うん。もうガンガン飲んじゃって!

――で、打ち上げでも飲むと。

増子: そうだね。楽しみだ、これ。打ち上げ、どこ行くかなあ?

菅原: 打ち上げの増子さんとかみじょうくんがヤバいですねえ……(笑)。しかもこれ、対バンツアーのファイナルなんですね?

増子: そうだね。いやぁ、うれしくなっちゃうからなあ……楽しみだわ(笑)。



DOHATSUTEN三十路(ミソジ)まえ 七色の虹をかける野郎ども
2013年11月17日(日)大阪 なんばHatch

出演:怒髪天 / 9mm Parabellum Bullet
開場 17:00 / 開演 18:00
1F立見・2F指定:前売 ¥4,500(Drink別)/ 当日 ¥5,000(Drink別) チケット発売中!
info. YUMEBANCHI(大阪)06-6341-3525

▶対談一覧へ戻る

copyright © DOHATSUTEN / BAD MUSIC GROUP. All rights reserved.