11月16日(土)名古屋 Zepp Nagoyaで共演するBRAHMANからTOSHI-LOW氏をお迎えしての対談です。

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今秋の対バン・ツアー「七色の虹をかける野郎ども」。ラスト手前の名古屋公演の相手はブラフマンだ。
パブリック・イメージは遠いかもしれないが、付き合いは長く、内面はとても近く、理解度はここまで深い。
増子とTOSHI-LOWがディープに語り尽くす!【文:石井恵梨子/写真:飯村 潤】



――怒髪天とブラフマンの出会いは、10年以上前だそうで。

TOSHI-LOW: 最初は京都の対バン。あれ面白かったなぁ。打ち上げでシミに「殺す!」って言われて、俺、超アガった(笑)。

増子: はははは。もうベロンベロンのシミが絡みまくって。あいつ全然覚えてないよ。

TOSHI-LOW: 俺もベロベロで、なんで怒られたのか覚えてないもん。で、先輩バンドを怒らしてしまったんじゃないかと思って、次の日気ぃ遣って増子さんに電話したの。「殺す、って言われたんですけど…」「あ、大丈夫。俺が殺しとくから!」だって(爆笑)。

増子: シミ、元気いいよねぇ。このTOSHI-LOWに向かって「殺す」って。あいつが勝てる要素、一個もないのに(笑)。でもあの時の対バンでさ、ブラフマンはチームとして最高だなと思った。もちろん存在は昔から知ってたし、TOSHI-LOWがカリスマ的な男であるってこともわかってたけど。でも、それ以上にチームの力がすごいんだなって。メンバー、スタッフ含め。これは俺らが目標にすべきだなって思ったんだ。



――ブラフマンの「チーム」は、どんなふうに違って見えたんでしょう。

増子: 結束が固い。縦社会でもあり横社会でもあり、男子校の部活みたいなノリがしっかり残ってんだよ。あと、メンバーだけじゃなくスタッフ全員がひとつのものに向かってる。言ったらさぁ、他のバンド、ライブやってる最中にタバコ吸ってるスタッフだっているわけよ。チームっていうのはそういうことじゃねぇと。ほんとブラフマン見てるとチーム全員が同じ気持ちで同じものを目指してるのがわかる。そうじゃないとあの集中力って出んよね。キッズが拝むように見てるのも当然だと思う。これだけ超人的で憧れられるバンドって……最後なんじゃないの?この先もう出てこないんじゃない?

TOSHI-LOW: (苦笑)そうかなぁ?

増子: でさ、もともとカリスマ的だったのに震災以降のTOSHI-LOW、ほんと生身でやってるじゃん。普通怖くてできないと思うんだよね。ある程度の顧客がいて、期待されてることもわかってて、なおかつそこまで変われるっていうのは……敵わない強さだよね。今はもう普段の姿まで見せてるわけでしょ。

TOSHI-LOW: 子供や嫁までネタにして喋ってますね。全部普段の俺だし、今さら隠すこともないし。あのヤッさんのコスプレのも見せたいですね(笑)。映像出したいなぁ。今なら喜んで出す!

――えーと、改めて解説しますと、2009年、怒髪天25周年のイベントの時、TOSHI-LOWくんは横山やすしのコスプレでいきなり登場したんですね。ただ、その写真は一切メディアに出すな、と箝口令を敷いていた。

増子: 俺らは知ってたんだよ、昔からTOSHI-LOWが面白い奴だってこと。でも当時は頑なに見せてなかった。すごいよね。あんだけのことやっといて出さないっていう(笑)。

TOSHI-LOW: 「絶対内緒っすよ!」つって(笑)。俺、昔から喜ばせたいのはどっちかと言うと楽屋だったし、いつの間にかワーッと増えてたお客さんのこと、最初は全然信用してなくて。だから今、ようやくベクトルが正しい方向に向き始めたっていう話なんだけど。

増子: でも堂々と前向いてさ、若い奴らを引っ張って、後から来る奴らの道標になってやるっていうの、実はクソ面倒臭いことじゃない? それをちゃんと引き受けてるの、本当に偉いなと思ってる。KOちゃん然りだけど、パンクスとして尊敬するよ。

TOSHI-LOW: 今こそ考えぬいた思考とスタイルを何か行動に移すべき時代だとしたら、パンクスとして嬉しいですよね。一時はやめようとも思ったけど、ぎりぎりパンクスやってて良かったって今は思う。

増子: 今は時代が逆よね。ハードコアだパンクだって言ってる奴なんて、昔はチンピラの戯言だったかもしれない。でも今はよっぽどこっちのほうが正論吐いてるもん。そういうパンクスの先鋒にいるのがTOSHI-LOW。



――同じくらいの怒りを持ちつつも、怒髪天はより明るい方向に進んでいますよね。それをTOSHI-LOWくんはどう見ているんですか。

TOSHI-LOW: いや……だから「あいつら武道館やって変わったよねぇ」って言われりゃいいと思ってる(爆笑)。

増子: はははは!そのフレーズ20年ぶりくらいに聞いたな。「武道館やって変わった」なんて言葉、久しく聞いてないよ!

TOSHI-LOW: 「あれで調子こいた」って今さら言われて欲しい(笑)。

増子: 今さら「こういう衣装着てください」とか言われてみたいなぁ(爆笑)。誰も得しない感じの衣装を着させられたい!

TOSHI-LOW: 最高っすね(笑)。でもさ、怒髪の明るさとか楽しさって盆踊りじゃないんだよね。蘇民祭ぐらいの感じ。ギリギリの祭りっていうか。

増子: やたら野蛮さの残る祭りっていう。結局ブラフマンもそこじゃん。

TOSHI-LOW: 踊る理由が、楽しむため、だけじゃなくてもいいよね。根本に悲しみがあって、辛いことあるから祭りの日が最高に楽しいわけで。その時に、ここまで明るく「今日ぐらいパァッとやっていけよ!」って言われると俺はすごくスッキリするけどね。別に楽しさを売りにしてるわけじゃない。「今日ぐらいホントの自分を出して、大きい声出して楽しんでけよ!」っていう。

増子: そうね。

TOSHI-LOW: そう言われても、なかなかね、どのスナックでも本音は言えないんだけど。でもすごいオカマバー行くとポロッと喋っちゃうみたいな。

増子: はははは!その感覚に近いかもね。「ここなら本音言ってもいいかな?」って油断させる感じ。

TOSHI-LOW: で、ライブの一回一回が祭りだっていう感覚、どんどん強くなってきてるよね? どこかにターニングポイントがあったと思うんすけど。今の怒髪はいつどこで見ても「……あれ、このまま終わっちゃうんじゃないの?」って思うくらい、毎回完全にやりきってる感じがする。

増子: それ、たぶんブラフとやってから考えた部分だよ。もちろん毎回やりきろう、とは思ってたけど、体力的な問題もある。肉体的に疲れちゃって踏ん張れないっていうのはほんと情けないと思うし、そこから健康に気をつけたり腹筋つけるようになったり。だから前より体力はついてんの。で、体力がつけばつくほど、そこをさらに超えていこうと思うようになる。

TOSHI-LOW: あぁ、それは確かに。

増子: ライブ終わった後にさ、汗だくでハァハァ言ってないのは嘘だって。「お疲れっすー。打ち上げ行きますかぁ」とか言えんのは、嘘だよ。一回一回の試合、一回一回の勝負をやってかないと。TOSHI-LOWなんて俺の何倍も体力あるよ?それでもライブは格闘技、闘いだって言って、本気でぶっ倒れそうになるまでやってる。それ目の当たりにするとさ、負けらんねぇな、俺らも絶対やんなきゃいけないなって思う。ブラフマン見たバンドはみんな思うはずなんだけどね。それは未だに学ぶところ。



TOSHI-LOW: いや、俺らもそれは先輩たちから学んできたところで。ガーゼみたいな前例もいるから。

増子: 超人的な先輩っているもんね。嘘だろ?っていう。

TOSHI-LOW: あと、メンバー4人がずっと変わらないっていうのは怒髪が目標でもあって。30年で武道館だもんなぁ……すげぇなぁ。30周年で武道館を設定したのが凄い。もう今さらスルーしちゃってもいいじゃないですか。

増子: なぜかというと、昭和のロッカーだから!

TOSHI-LOW: ははははは。でも10年前の京都ではね、後ろに武道館は見えてるバンドじゃなかった。たぶん、アニキのやってることがほんとリアルに感じられる時代になったんだと思う。できれば隠しておきたい、一番ダメなところを拾ってくれる歌でしょ?ライブ来てる人たちもさ、どっちかっつったらストレートに金持ちになった人はいないと思う。

増子: いないだろうね。

TOSHI-LOW: もっとダメで、毎日傷ついて苦しかったりする奴ばっかりかもしれないけど。そこで「おめぇ、よくここまで生きてたな」って肩叩いてくれる先輩っつうか。毎日「生きてて何になるんだよ?意味なんてねぇじゃん!」って泣いてる奴ばっかりかもしれないけど、その時に「今日会えたでしょ、意味あったでしょ?」って手を差し伸べてくれて。あぁ俺も生きてて良かったんだ、って救われる。「お前みたいな奴が、よくここまで生きてたな」って言ってくれる感じ。それは毎回、ライブ見るたびに思う。

――実際、増子さんは必ず「よく来たぁ!」というMCから始めますね。

増子: そうだね。TOSHI-LOWはよく理解してくれてるけど、俺が言えることなんて、そんな大したことじゃない。でも「よく来た!」だし「よく生きてたな!」なの。そういうこと。

TOSHI-LOW: 存在してるだけで100点だって言ってくれる人なんて、生まれた時の両親くらいじゃない?怒髪天、それを言ってくれるからね。「お前生きてるだけで満点だぜ?」なんて……すごい、あの一言は。

増子: 生きてないと始まらんからね。で、長年続けてると周りも死んでいくわけじゃない。腹立たしいけどね。そういう経験を先にしてきて、今後、年下の世代にも同じことが起こり得るってわかるよね。そいつらの大事な仲間だって突然死ぬんだと思う。その時に、俺らが先に転んでる姿を思い出してくれりゃいいわけ。スッ転んだ姿をまず見せていかなきゃ。

TOSHI-LOW: 越前屋俵太みたいな、最高の転び方を(笑)。

増子: 受け身も取ってね、最高に大きく転ぶっていう(笑)。

TOSHI-LOW: でも、それを続けて30周年で武道館ができるって、他のバンドの夢になるなぁと思う。ほんと、20代の一瞬に人気が出てチヤホヤされて、あとは地元帰ってくすんだ人生になってしまう人、そのバンドがあったために余計卑屈になってしまった人、同世代にもいっぱいいたはずで。逆転劇の逆転劇みたいな感じじゃん、怒髪天は。諦めないのが結局は負けないことだし、最終的に掴めるものがあるって、ほんと夢がある。若いうちに喧嘩してバンド解散させたり、みんな簡単に大事なものを捨てちゃうんだけど、でも、今持ってる楽器とそのメンバーで鳴らしてるもの、実はものすごい可能性があるんだよね。それは怒髪天を見てると余計思う。



——バンド以外の人にとっても、大きな夢になっていますよ。

増子: 衣笠と一緒だよ。何しろ立ち続けないと。デッドボールでも塁に出られる。ただ、バッターボックスに立ち続けないと打つこともできないしデッドボール受けることもできないから。それだけだよね。で、バッターボックスに立つためには、人事を尽くして天命を待つ、ただ待っててもダメなの。ちゃんと尽くさないと。それは体力的なことであったり、事務的な、すごい面倒くさいこと、実はストイックなことであったり、裏にいろいろあるんだけど。

TOSHI-LOW: あるある。

増子: でも最終的にはね、楽しいからやってられるんだよ。俺らなんか特に、他のバンドが20年くらい前にバーッとやっちゃった楽しみを、20年かけてじっくり味わってんだから。

TOSHI-LOW: でも、人前で明るい笑顔見せられる人って、実は後ろ姿が神経質だったりする。アニキはそうなんだけど。人に対してすごく細かく気を使ってるよね。それは過剰なサービス精神でもあるけど、そのぶんすごく傷つくんだろうな。

増子: これだけ全力でやってるんだから、お前も全力で楽しませてくれっていうのはあるかな。別に笑いじゃなくてもいいけど、ひとつでも楽しませてくれないとガッカリだな。ひとつでも尊敬できないと付き合えないっていうか。でもこれは昔っから。意識してやってることじゃないんだよ。

TOSHI-LOW: ほんとはワンクッション置いてさ、手袋でもして触れればいいのに、全部を素手で持っちゃってる。だから火傷もすんだろうなぁって思いながら俺は見てるの。俺なんかは手の皮自体が厚くなっちゃってるけど、アニキはわざと薄い皮膚のままここまで来てて、それで熱いもの持ってるから。だからこそ傷つく人の気持ちがわかるし、いつだって強くない人の味方なんだろうなぁって思う。

――では最後に、11月16日の名古屋での対バンについても聞きたいなと。

TOSHI-LOW: これって、どういうチョイスなの?

増子: まず、7本やろうぜっていう話になってて、前からやりたいと思ってたバンドを全部誘おうと。みんなラクは絶対できないバンド。ブラフが一番キツいんだろうなぁ。

TOSHI-LOW: でも対バン久しぶりだし、楽しみっすね。お客はどうなんだろう? どう混ざるのか全然イメージできないんだけど。

――いや、そこまで客層も分かれてないと思います。たとえ初めて見る人も、お互いすぐに理解できるはず。

TOSHI-LOW: やっぱアレだね、25周年の時にやったヤッさんが今になって効いてるんだね。「あいつは信頼できる!」みたいな。

増子: それ、絶対あるよ。「あの男はあそこまでやったんだ!」って。

TOSHI-LOW: ははは。実際はポカーンとしてましたけどね。「……誰?」って。

増子: そりゃそうだよ。わかんないって。当時はあんなコスプレする男だとは誰も思ってなかったんだから!



DOHATSUTEN三十路(ミソジ)まえ 七色の虹をかける野郎ども
2013年11月16日(土)名古屋 Zepp Nagoya

出演:怒髪天 / BRAHMAN
開場 17:30 / 開演 18:30
1F立見・2F指定:前売 ¥4,500(Drink別)/ 当日 ¥5,000(Drink別) チケット発売中!
info. JAILHOUSE 052-936-6041

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