11月10日(日)仙台 Rensaで共演するTHE BACK HORNから松田晋二氏をお迎えしての対談です。

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仙台の対バン、THE BACK HORNからやってきてくれたのはドラマーの松田晋二!
このバンドを最初期から知る増子兄ィと、まずは出会った時のエピソードから始まり、怒髪天との交流、さらに話はロック・バンドとはどうあるべきか?というところまで発展!
今回もまた激アツトーク!【文:青木 優/写真:飯村 潤】



増子: バックホーンとは付き合い長いんだよな! もう親戚みたいなもんだね(笑)。だって、それこそデビューする全然前から知ってるからね。

松田: そうです、そうです。そこで増子さんとは不思議な縁があって……バックホーンが、DMBQとMAD 3とゆらゆら帝国の新宿リキッドルームのオープニングアクトをやらせてもらった時があって、その打ち上げで初めてお会いしたんですよね。俺らがインディーズの『何処へ行く』ってアルバムを出した時だったんで、99年頃だったと思うんですけど。

増子: 俺あん時、バンドやってなかったと思うんだよな。うちの弟のバンド(DMBQ)を手伝って、車を運転してやったりしてたから。

松田: そのイベントの時に、15分だけ時間をいただいてライヴやったんですよ。だけど自分たちのライヴの手応えがあまりなくて、しかもどのバンドも衝撃で、すごくヘコんだんです……。で、リキッドルームが1000人入ると聞いてたんで、その1割は売れるだろうと思ってCDを100枚持ってったら、結果、1枚しか売れなくて。その1枚も隣の物販のスタッフが気まずくなって「じゃ、私買います」みたいな感じで……。

増子: (笑)これがいいところなんだよね! 俺らもRISING(=RISING SUN ROCK FESTIVAL)のデカいステージ出た時に「3万人だろ?CD足りねえぞ!」ってたくさん持ってきたんだけど、もう足りちゃって足りちゃって(笑)。とんでもない勘違い、俺らも何回もくり返してきたからね!

松田: ああ、やっぱりそうなんですね(笑)。

増子: でもそん時のバックホーン、ほんとに良かったんだよ。おい大丈夫か!?ってぐらい全力でこっち向いてたから、こりゃいいバンドだなと思ってさ。勢いあったしね。なのに打ち上げでみんなすっごいヘコんでて、真剣に話をしてんの。元気ねえなと思ったから「お前ら、どうしたんだ?」と。「いやぁ、今日の反省点を……」「いやいや、良かったよ」って。「でもCDも売れなかったし……」「そんなに買わねえって!」(笑)。

松田: あはははは!

増子: そっから話すようになったんだよな。しかも打ち上げでも、ほかの3バンド、話しかけづれえだろ(笑)。

松田: たしかに。坂本(慎太郎)さんとか、近寄れませんでしたね。そこに増子さんがうちらのところに来てくれて、それがうれしくて。

増子: それこそ、また酔っぱらってね(笑)。

松田: で、増子さんが「とにかく打ち上げは飲め!」って。それから俺たちもちょっとずつ前向きになれたんです。



――その時のバックホーンは、そのぐらい良かったんですか?

増子: 良かった! やる気が目に見えるようにわかったね。若手のバンドって斜に構えてるというか照れがあるもんだけど、一切なかったもん! そりゃもちろん、今に比べたら粗かったけどね。その前にバックホーンのことはClub Queの店長から聞いてたから、観たかったんだよ。東京で活動するにあたって店長に「どうやったらお客さん入るようになるんですか?」って訊きに来て、「とにかく<ここでライヴやります>ってことを宣伝しなきゃいけないよ」って言ったら、そこから毎日Queに来て、ビラ配ってたっていうの。しかも自分たちのライヴに来る可能性がある客だろうが、ない客だろうが(笑)。

松田: はい(笑)。やってましたね。

増子: だから俺、若いバンドに言うの。「バックホーン、知ってるだろ? あいつらも今みたいになるまでに、ムダかもしんないけど、毎日自分でビラ配りに来てたんだ。そういう気持ちが大事なんだぞ? ひとりでも引っかかってくんだぞ!」って。バックホーンはちゃんとムダ足踏んでるバンドなんだよね!

松田: ああ、ムダ足……踏んでます!(笑) でもそれは今でも後悔してないですね。自分たちの実感で一歩ずつ、目に見えるところで確かめながら登ってこれた気がしていますから。

増子: そこが素晴らしい! それにちょうど同じぐらいだもんな? うちらが活動再開したのと。だから同期に近いものはあるよ。

松田: そうですね、イベンターも一緒ですしね。もちろん一番最初から考えれば、怒髪天は大先輩ですけれど。

増子: それがここまでガシッと来てくれてさ。それこそ同じぐらいのデビューのバンドもいっぱいいたと思うけど、そん中でも生き残ってるじゃない? まあ当然だとは思うけど、それが俺らとしてはうれしいというか。もう「負けんなよ!」と思うんだよね。「あいつらをブチのめせ!」と思ってるから。

松田: あはははは!



――あ、あいつらですか?

増子: そう! 同時期に出てきたあいつら、先にガーンと行った連中とか、バックホーンがブチのめせ!ってね(笑)。それに「風とロック」とのつながりもあるしさ。あと、バックホーンはバンドでちゃんとケンカするんだよな。これはすごい大事! ほんと、どうでもいいことでケンカしてるし! とくに光舟(=岡峰光舟/ベース)と栄純(=菅波栄純/ギター)ね(笑)。最高! もう兄弟ゲンカだもん(笑)。

松田: (笑)そうですね、昔はとくにやってました。怒髪天のメンバーの前でそういうところを見せてしまいましたし、BRAHMANのツアーに出させてもらった時もそういうのがあって……申し訳ないです! ほんと、先輩を前にして……。

増子: (笑)いや、最高だと思うよ? それでこそだと思う! いいバンドって絶対それ、ちゃんとあるのよ。それは真剣だからなんだよね。で、お互いにちゃんと言うでしょ? そうじゃないとバンドって続かないと思うし。

松田: たしかに! それは怒髪天にも思うんですけど、バンドとしての一体感もありながら、信頼関係みたいなのが固い絆としてあるのが、ライヴ中も見えるんですよね。それがすごいなと思うんです。でも怒髪天も、みんなすごく仲いいんだろうなと思ってたら……去年の年末に箭内(道彦)さんのラジオに出させてもらった時に、増子さんと清水さんが本気でケンカしましたよね。公共の電波の中で(笑)。

――ラジオ番組で、メンバー同士でケンカしたんですか!?

増子: (笑)酔っぱらってたからね。あれはケンカじゃないの。酒呑んで、よく言い合いになるのよ。

松田: あ、そうですね(笑)。ケンカじゃないですね。

増子: 俺ら的には打ち上げとかでよくあることだったんだけど、たしかにラジオ聴いてる人はビックリしただろうね(笑)。それもさっきのバックホーンと同じでさ、ほんと、どっちでもいいんだわ。毎回そうなんだけど、でもバンドはそういうのが大事だからね。



――メンバー同士、それだけ言い合える関係なのが大事だってことなんですね。

松田: それに怒髪天とはメンバー同士が密に仲良くさせてもらってるんですよね。そこにはプレイヤーとしての尊敬もありますし、人間としてお話を聞いちゃうというのもありますし。だからほんとに<親戚のお兄さん>という感じなんですよね。

増子: 歳離れてるバンドで一番仲いいもんね。お互いに田舎から出てきてるってのもあるし、バックホーンは全部納得がいく音楽でありつつ、驚かせてくれる部分もあって。俺はバックホーンに関しては安心感あるからね! 絶対なくなることもないだろうし。

松田: でも俺らが怒髪天から受け取ったものは多いですよ。ほんとに!

増子: いや、俺らが学んだものも多いよ! バックホーンは若いゆえのイビツさも俺ら以上にあったし、すごいチャレンジするし、それをやってのける意志の強さというか……「俺たちはこれだ」っていうさ。やっぱ泥臭いんだよね。でもそれがロックなんだよな。

松田: ああー。わかります!

増子: シャレたものって消えるからな。俺、よく言うんだけど、今年一番カッコいいものは、来年はカッコ悪いからさ。ロックなんつうのはトレンドになるべきじゃないんだよ。もっと土着的なもんだと思うよ。

松田: うんうんうん……心に響くものっていうか。

増子: そうそう、メシみたいなもんなんだよ。今年メシうまかったけど来年食わねえ、なんつうこと、ないから。

松田: そうですね。大事なのは、形から出てきた音楽じゃなくて、心から出てきた音だったりメロディなのかな、と思うんですけど。

増子: そう! 曲を作って聴かせる、ライヴでやるっていうことはさ、ラブレターを渡してるようなもんなんだ。すごく好きな娘に。

松田: うんうんうん。ある種、恥ずかしいようなものでもあって……。

増子: そう。そのぐらい気持ちを込めたものを書いてるわけじゃない? それを渡す時にさ、<カッコ良く>っていう概念が先にあると、「俺の決め角度ここだから、このぐらいの角度でこう渡して」みたいなことになるじゃん? そんなの、手紙を受け取った相手に気持ちが伝わるか?って話だよ。

松田: たしかにそうですね(笑)。



増子: 「これ、頼むから読んでくれ!」と。土下座して鼻水垂らして、「俺の気持ちこうなんだ!もう付き合ってくれ!」つって渡すものじゃなきゃダメなの。俺ね、バックホーンにはそれがあると思うの。しかも若いながらにしてそれがあるところが、ほんと心を打つんだよね! それに尽きるよ。

松田: ありがとうございます!

増子: ほんと、そう。斜に構えて、カッコつけて渡す? 俺が女だったら受け取らんわ! 「バカじゃないの?」って言うわ。だけど「頼むから!」って言われると、ものすごい真剣なんだなと思うじゃない? 絶対に人間的なものは出るの! いかに真剣に生きてるか、なんだよ。

松田: 誠実に、ということですよね。

増子: そう。誠実に向かってるか!?っていうことだと思うんだ。

松田: はい! だから人間と音楽の出具合ってあるのかなと思います。とくにライヴだとそれが露骨になる気がしますね。怒髪天の人間力と音楽って、そこがすごく比例しながら出てるなって僕は思ってるんですよ。人間味とか気持ちとか、伝えたい思いとか、その人が培ってきた経験みたいなものが音楽には出るもので、さらにバンドになると4人の化学反応でそれが響くっていうか……やっぱ怒髪天はそこなんですよね。そこがすごく尊敬できるんです。

増子: それはバックホーンも一緒だよ! 人間力だからね。バックホーンは4人とも仲いいし、いいチームなんだよ。で、そういうバンドだと、お客さんも入りたいと思うんだ。バックホーンは「あの仲間になりたいな」と思わせるバンドだと思う。それにライヴが圧倒的なんだよね。

松田: ああ、それはうれしいですね。ありがとうございます。

増子: うん。近年は、ほんとマズい! すげえライヴやるから、やりづれえ!!

松田: (笑)いやいや、それはこっちもですよ!

増子: 俺はバックホーンを親戚の、いとこの子みたいな感覚で見てたんだよ。それが何年か前、ひさびさにライヴ観た時にひっくり返ったんだよなぁ。こりゃかなわねえぞ! いろいろな面でフンドシ締め直さなきゃまずいぞ!っていうさ。ほんっとビックリしたんだよね。

松田: その話は、松山かどっかで一緒にやった時に言っていただきましたね(笑)。でも対バンはひさしぶりなんですよね。しかも仙台でやるのは、たぶん初めてですよね?

増子: そうだね。仙台では初めてだね!

松田: そこは東北出身なんで、ひとしおの思いがあります! それに怒髪天は、親戚でもありますし、先生でもあって、採点されるみたいな感じもちょっとあるんですよ。それまで自分たちがどれだけバンド勉強してきたかを怒髪天のライヴを観て「あ、まだまだ怠けてたな」って感じる時もありますし……だからこの仙台で、俺たちのバンド勉強の結果が一個出ると思うんですよね。そこでは自分たちの音楽に思いっきり全力投球して、尊敬を持って、次に出る怒髪天のライヴを迎えたいですね。その結果、この仙台のライヴが熱くなるように目指したいなと思ってます。

増子: 楽しみだなあ。すごい楽しみだ!



DOHATSUTEN三十路(ミソジ)まえ 七色の虹をかける野郎ども
2013年11月10日(日)仙台 Rensa

出演:怒髪天 / THE BACK HORN
開場 17:00 / 開演 18:00
前売 ¥4,500(Drink別)/ 当日 ¥5,000(Drink別) チケット発売中!
info. GIP 022-222-9999

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