11月8日(金)札幌 Zepp Sapporo で共演するPOLYSICSからハヤシヒロユキ氏をお迎えしての対談です。

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怒髪天の地元・札幌ではポリシックスと激突!というわけで同バンドのハヤシヒロユキ氏との対談なのだが……実は増子兄ィ、意外とテクノ好きなのである。
しかも両者には特撮好きという共通点もあり!おかげでコアな話に陥りそうになりながらも(笑)、対談は終始いいムード。
この調子ならZepp Sapporoもかなり盛り上がりそう!!【文:青木 優/写真:飯村 潤】



増子: 俺はハヤシのこと、だいぶ前から知ってるからね。経歴長いもんね。でもフミ(ベース)のほうが長いよね?54 NUDE HONEYSからだから。

ハヤシ: そうですね。僕もだけど、フミのほうが長いですね。

増子: だからどっちも相当前から知ってるんだよ。で、ポリシックスは最初、Queで観たんだっけな? 俺はもともとYMO世代でさ、それこそディーヴォとかクラフトワークとかドンズバで、それとANARCHYと並列して聴いてた世代だからね(笑)。だからテクノも好きだったんだけど、ハウス寄りのものには興味が行かなかったんだよね。

――そののちに出てきた、クラブ・ミュージックのほうのテクノですね。

増子: そうそう。コジャレ過ぎてるというか、ヒネリがないというか、ポピュラリティがあるものに近いっていうかさ。服で言うとミキハウス的なね。結局みんな好きでしょ?BAD BOYって書いてある服とかさ。

ハヤシ: ああ、ああいう感じのことですね(笑)。

増子: あくまで俺のクラブ・シーンっていうものへのイメージだけど(笑)。要はYMOから入ってるから、もっとメロディがあったり、バンドだったりするのが俺のテクノなの。

ハヤシ: ですよね(笑)。わかります。

増子: で、俺、『24時間テレビ』で初めてディーヴォ見たの。あれ見た時に、もう衝撃で。これはパンク・バンドだな!と思って。

ハヤシ: ああ! はいはい。あの時はそうだったみたいですね。



――何年頃の話ですか?

増子: 中学生の時だから1979年かなあ。それ、夜中だったの。あの頃の洋楽のテレビって『ベストヒットUSA』ぐらいしかなくて、それも北海道ではたまにしか見れなかったから、その時は友達からすぐ電話来てさ、「ディーヴォ出てるぞ!」って。これがテクノだ!っていうのね。しかもジャンプして、スネで着地しちゃって!

ハヤシ: そう(笑)。増子さんとディーヴォの話すると、絶対それ言いますよね。ジャンプしてスネで降りるって。すげえスネだ!って(笑)。

増子: そう!! 気ぃ狂ってんな!と思ったよ。

ハヤシ: あの『24時間テレビ』の時は違うアーティストが出るはずだったんですけど、その予定が飛んじゃって、代わりにディーヴォが出たそうなんですよ。マーク・マザーズボウ(ヴォーカル)が『24時間テレビ』なのに脚を引きずって、ちょっと身体が悪そうなパフォーマンスをしながら「募金しよう!」みたいな。

増子: 最悪だな、あいつ(笑)。

ハヤシ: そう。めっちゃパンクな、ヒネくれたあいさつをしたっていう。僕は見たことないんですけどね。

増子: で、俺はそういうテクノが見たかったんだよね。テクノには、いわゆるロック・バンド的でありパンク・バンド的な、汗をかく、泥臭い部分があるべきだなと思ってたんだけど。ポリ観た時には「これ、すごい正しい解釈だな」と思ったんだよ。

ハヤシ: それはうれしいですね。

増子: だけど早かったよね? 周りでそんなバンド、1個もいなかったし。まあ今もいないけど(笑)。

ハヤシ: (笑)そうなんですよ。まあ僕がディーヴォに興味を持ちはじめた時、周りにそういうのが好きな奴は全然いなかったですけどね。新宿JAMにデモテープ持っていった時も、そういう人たちと対バンできると思ってたのに、誰もいなかった(笑)。

増子: ほんと、そうだよ。こんな帽子あるじゃん?あれ、江口寿史のマンガとかで出てたじゃん?

ハヤシ: はい、エナジードーム(=段々になった赤い帽子で、ディーヴォのトレードマーク)ですね。『すすめ!!パイレーツ』に出てましたね。

増子: そうそう。だからすごいメジャーなもんだと思ってたから、日本にも(ディーヴォのフォロワーが)何バンドかいそうなもんだけど、誰もいないからね。あれ、かぶってたの、爆風スランプぐらいでしょ?

ハヤシ: ああ、初期の爆風はそうですよね(笑)。

増子: そう、それしか見たことなかったから。だからポリはすごい衝撃的だったし、できるんだな!って思った。あと声質だよね。歌の。これ、すごい大事でさ。やっぱ朗々と唄うもんじゃないからさ。プラスチックスとかもそうだけど、あれがテクノの正統的な歌唱法なんだよ。それにハードコア混じってるじゃない?しかもポップなんだよね。

ハヤシ: (笑)うれしいですね。あの唄い方は、もう最初っからでした。俺が唄うならこうだろう、みたいな。あれが僕の中でのストレートなロックの表現だったんで。だから楽器的な……打楽器的なほうがカッコいいんじゃないか、みたいな感じで唄ってます。

増子: うん。あれはテクノ的にも大正解なんだよね。



――ところで、おふたりが最初に話したのはいつ頃なんですか?

増子: やっぱ相当、前だよね。何かの打ち上げとかだと思うよ。

ハヤシ: 僕は怒髪天をQueで観たのを覚えてるんですよ。その頃ポリは、(増子)真二さんのDMBQとよく対バンしてたんですけど、ちょうどそこで倉山さんが「来月の<VIVA YOUNG!>に怒髪天出るんだよ」って(注/ VIVA YOUNG!は下北沢Queの人気イベントで、倉山氏はその主宰者)。僕、怒髪天はそん時はまだ知らなかったんですよ。で、その打ち上げに顔出したら、増子さん、すっごい盛り上がってて。サウンドも聴いたことがなかったんで、きっとすっげえ怖いバンドなんだろうなと思ったんですよね。「怒」って書いてあるし、みたいな(笑)。それこそ<亜無亜危異>みたいな。

増子: アハハハ! そっから影響受けてるからね(笑)。

ハヤシ: で、次に怒髪天をVIVA YOUNG!に観に行ったら、もうめちゃくちゃ面白くて、すげえ楽しいライヴだったんです。そこでまずパッと「すげえ兄弟だな!」と思って。

増子: (笑)ほんと、そうだよね。

ハヤシ: でも、その時は増子さんには軽くあいさつしたぐらいで……その直後に特撮のイベントがロフトプラスワンであったじゃないですか?その時に初めてちゃんと話したんじゃかな。中込さん(=ライター・中込智子氏)の主催で。

増子: そうそう。俺とハヤシは特撮つながりでもあるからね!ハヤシもすごい好きだっていうのは知ってたからさ。

ハヤシ: で、その時は増子さんが『(仮面ライダー)V3』のネタを出して、僕は『新マン(=帰ってきたウルトラマン)』出して。増子さんにはまだ怖いイメージがあったんですけど、でも話がめちゃくちゃ面白かったんですよね!

――増子さんのV3ネタって?

増子: V3、だってバカだもん! あの怪人、ひどいからね!!(笑)

ハヤシ: で、増子さん、「お前ら、今日は朝まで飲むぞ!」って言ったのに、その30分後くらいに客席で、体育座りで超寝てて(笑)。

増子: そう、すっかり酔っぱらっちゃってね。もう気持ちに肝臓がついていかなかった感じだよね(笑)。

ハヤシ: やっぱ、すげえ面白い方だなあと思って(笑)、急激に僕の中で「増子さんは素敵な人だな」っていう熱が上がって。そっからライヴも観に行かせてもらうようになりましたね。今でもフェスとかで会うと、最近の特撮事情を話したりする感じです。情報交換しますね。

増子: そう。ハヤシは歳のわりに、俺らが観てたものにも詳しいから、すごいよな。そのへんも合うんだよね。最近、何観てんの?

ハヤシ: 最近は『ウルトラマン』の新しいシリーズが始まったので、それ観てますね。

増子: そうか~。俺は最近は新しいの観てないんだよね。結局同じのばっか観ちゃうんだよ。『(ウルトラ)セブン』とか、あと『ウルトラQ』だよね(笑)。やっぱ。

ハヤシ: ああー。カラーのやつは?

増子: いや、白黒でしょ。古典からでしょ!あと、『エヴァンゲリオン』だね。何回観んだ?っていうぐらいだよ。

ハヤシ: アニメは僕、あんま行かなかったんですけど、でも観ましたよ。劇場版も見ました。そうだ、あれ行きました?庵野(秀明)さんのプロデュースした――。

増子: 行けなかったのよ!特撮展みたいなやつね。西荻の駅を(ジオラマで)作ったやつでしょ?

――「特撮博物館」ですね。僕、行きましたよ。めちゃくちゃ面白かったです。

増子: そうらしいんだよな。あれ、写真撮れたんでしょ? 撮りたかったんだよなあ~。

ハヤシ: あの時に上映された新作、こないだ出た『ヱヴァンゲリヲン(新劇場版:Q)』のボーナスに入ってるんですよね! あの特典映像だけでも欲しいなあ。愛を感じるんですよね。

増子: 『巨神兵(東京に現わる)』ね! あれはデカいので観たいよねえ。あれはすごいよ!!

ハヤシ: ……っていう話を増子さんとするのが楽しいんですよね(笑)。



増子: 特撮、やっぱ夢あるんだよね。あえてそこに触れない美学があるじゃない?「背中にチャック着いてるよ」とか、そういうことではないんだよ。

ハヤシ: そうなんですよね! まさに。

増子: それを言ったら何も楽しめないからね。ロック・バンドだってそうだよ。「●●だぜ~!」ってふだんから言ってる奴、見たことないから(笑)。そういうもんなの。郷に入らば郷に従うじゃないけど、それを現実として受け入れるというかさ。

――おふたりはこういう話を会うたびにしてる感じなんですか?

増子: そうだね。打ち上げでも飲んだりするし、フェスとか会っても「おーう!」なんつって。まあフミのほうが一緒に飲んでるけどね!よく会うから!

ハヤシ: (笑)3人ぐらいいるんじゃないかっていう噂です。

増子: そう! フミとコレクターズの小里さんは、どこ行っても会う!!小里さんも若いバンドの打ち上げに、けっこういるからね!

ハヤシ: (笑)いますねえ。

増子: で、フミもそうだけど、ポリはメンバーそれぞれ、すごく面白いし、スキルもあるし、センスもいいんだよね。あと、昔ながらのバンドマンらしさがあるよね。昔っから下北にいるような、ちゃんとライヴハウスからやってきたバンドマンらしさが全員にあるんだよ。それこそバンドをやるっていうこと――自分らで好きな曲を作って、思いっきり楽しんでライヴやるっていう基本の基本がちゃんと一番最初にあってやってるバンドだなと思う。「これで有名になってやる」とか「これでバカみたいに金持ちになってやる」ということから始まってないと思うんだよね。それでこれやってたらビックリするけど(笑)。

ハヤシ: (笑)そうですね。でも、うれしいです。たしかに、そうやって始まったバンドですから。

増子: うん、すごく泥臭いよね。しかもライヴ観てて、みんなが熱狂するのがわかるっていうかさ。熱いバンドとかハジけるバンドでも、いろいろなベクトルあってさ。わりとフィジカルというか、スポーツ的なものに寄りがちなのよ。で、身体鍛えてやったり……まあブラフ(=BRAHMAN)とかもそうだけど、格闘技とか、そっち側に寄りがちなの。でもポリはほんとの意味で不健康というか、狂気はらんだ感じがあるよね。学校ですごい勉強できるけど、からかってると本気でキレる奴、みたいなさ。ああいうギリッギリのところ? そのへんもやっぱ80年代的なセンスなんだよなぁ。

ハヤシ: まさに、そういうのをカッコいいと思うタイプでした! YMOでもディーヴォでもクラフトワークでも、僕の中のロック体験はその衝撃だったんです。「メガネかけたヴォーカルがロボットみたいな動きして、汗かいてんのに涼しい顔してパンクを叫んでるほうが怖いな!」って。今思えば、すごくパンクな音楽だと思って聴いてた気がするんですよね。



増子: そういう危うさをポリは持ってんだよね。しかしそこをマニアックに見せないで、フェスとかでも若い子らがガンガンに盛り上がるっていうのは、みんなが本能的に感じてるってことだよね。すごいことだよ! YMOでもできなかったことだからさ。ロック・バンドの要素が完全に入ってるというのは。

ハヤシ: おおー(笑)。ありがとうございます!

増子: バンドなんて<なんかわからんけど、すごい>でいいんだよね。それはどのジャンルでもそういうもんだと思うんだ。<見たことない生き物見た!>みたいなさ。で、<何なんだろう?>と思って理解したくてライヴ行くと思うんだよ。だからポリは異端に見えて、ものすごく正しいんだよね。

ハヤシ: いや、たしかにそういうのに出会った時に、めちゃくちゃ興奮しますね。自分も、型にハマった、きっちり整った音楽よりは、イビツな、ちょっと違和感を感じる、なんかわかんないけどすごい! やっぱ、そういう音楽が好きですね。今でも。

増子: あと、ライヴ終わったあとに、もうハァハァ言っててさ。ブラフとかもそうだけど、何かを発するっていうことはそれじゃないとウソなんだよ。全力で投げた球じゃないと、当たっても痛くないもん。それをちゃんと体現してるのは、ロック・バンドだってことなんだよね。

ハヤシ: それこそ怒髪天のライヴはものすごいですよね。何かのイベントで一緒になった時に、ステージ終わった増子さんが真っ赤になって、汗だくだくで戻ってきて。すごいぐったりしてるから「大丈夫ですか?」って言ったら、「いや~、どんだけ短くても疲れるねえ、ライヴは」って……たしかにそうだなあって。

増子: 短いほど疲れるよ。やっぱ緩急つけれないじゃん?ドーッ!て行って終わんなきゃいけないから。そういう<身体で稼ぐ>みたいなのがロック・バンドじゃないかなって俺は思うからね。ポリもまさにそうなんだよ。で、シャレもきいてるじゃない? 深刻なものを伝ようとすればするほど、ユーモアが必要なんだよね。

ハヤシ: そうですね、ユーモアは大切にしてます。それがないと、どこか自分らしくないというか。それこそウソになっちゃう気がするんですよね、自分の性格上。

――その対バンの地は札幌なんですね。

増子: そう、俺らの地元で。ポリとやったら面白いのはもちろんわかってたけど、なかなか一緒にできなかったからさ。楽しみだよ!うまいもん食おうぜ。

ハヤシ: いいですね~、札幌。どんな雰囲気になるでしょうね?

増子: 札幌の客はあったかいからね。みんな優しいよ。だいたいみんな、呑んでるから(笑)。まあ誰が盛り上がるって、俺らが盛り上がるからね!!

ハヤシ: アハハハ! よろしくお願いします!



DOHATSUTEN三十路(ミソジ)まえ 七色の虹をかける野郎ども
2013年11月08日(金)札幌 Zepp Sapporo

出演:怒髪天 / POLYSICS
開場 18:00 / 開演 19:00
1F立見・2F指定:前売 ¥4,500(Drink別)/ 当日 ¥5,000(Drink別) チケット発売中!
info. WESS 011-614-9999

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